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Interview

2017/10/7に放送された「象の小規模なラジオ」での話を書き起こしたInterviewです。
Bandの新作にこめる意気込みや制作秘話、バンドの雰囲気などが心地良く伝わる良い放送だった為、特別に許可を頂き掲載させていただきました。

​ロングインタビューになりますが是非とも御一読ください。

Emeraldの楽曲にはiTunesがリンクされており別ウィンドウでブラウザが立ち上がります。

Apple Musicでも聞くことが出来ます。是非聴きながらお楽しみ下さい。

象の小規模なラジオ#498

201710.07

Emerald 『Pavlov City』特集

番組パーソナリティー:成川勇也、やなはる、ジンボユウキ

ゲスト:Emerald

ボクが先に進もうと思う時っていい曲ができた時なんですよ。苦しい窮地から抜け出そうと思う理由もいい曲ができた時なんですよ。この曲ができて、その時めっちゃ苦しかったけど、「これもうちょっと頑張ろう」みたいなきっかけをくれた曲だったりもするんです。(中野)

やなはる(以下、やな):今週は10月18日に2nd アルバム『Pavlov City』をリリースするバンド、Emeraldのメンバー5人全員にお越しいただきました。Emeraldのみなさんは前作『2011ep』のリリースから約2年ぶり2回目のご登場ということで。フルアルバムのリリースはもう3年ぶりなんですが、あんまりそんな感じがしなかったというか。

 

成川勇也(以下、成川):ライブはコンスタントにやってましたしね。

 

中野陽介(Vo.以下、中野):ずっとやってましたね。

 

やな:この2年間でEmeraldの名前もますます広まってきたんじゃないかなと。

 

藤井智之 (Ba. 以下、藤井):実感があるのか無いのか…(笑)

 

成川:結構、「満を持して」感はありますよね。

 

磯野好孝 (Gt. 以下、磯野):あーやっぱり、そんな風に言っていただいて…

 

成川:なので今日はその2nd アルバム『Pavlov City』の話を中心に、1時間よろしくお願いします。

 

【1曲目】Emerald / Pavlov City

成川:もう結成から7年になるんですね。そろそろ結成10年が見えてくる……。

 

磯野:怖いね。

成川:前回はまだこちらも元PaperBagLunchboxの中野さん、みたいな枕詞で紹介していましたけど、もうそんなの全然必要なくなって。Emeraldの名前も色々対バンとかこなして広まってきたと思うんですけど、アルバムを出してからの2年間でやっぱり反応って増えてきましたか?

 

中野:実は、アルバムを出した直後っていうのはあまり実感がない部分もあったんです。普通はアルバムを出してすぐの頃に盛り上がって、そこからまた次のコンテンツを出すまで周りの反応も薄くなっていくものじゃないですか。

 

やな:うんうん。

中野:けど結構時間が経ってるのにずっとオファーが来たり、いろんな雑誌とかWebとかで時々名前を見るな、みたいな。そういう状況が起きてて嬉しいですし、ライブに誘われれば精一杯やっていこうということで、曲を一生懸命作りながらもそれを並行してやってきた感じだよね。

 

藤井:なんかやっぱ、ファーストアルバム(『Nostalgical Parade』)のパンチは強かったなって感じはあるよね。

 

成川:今の時代、Emeraldの名前を出しやすくなったというか、文脈で語りたくなってきたんじゃないかなあという……。

 

中野:それめちゃくちゃ嬉しい!

 

藤井:文脈で語ってもらいたい(笑)。

 

成川: Emeraldとしてはこの2年間で変わったなと思うところはありますか?

 

磯野:そうですね、“ライブの回数”とか“ライブに誘ってもらう回数”が増えたっていうことにも比例して、自分達も結構前向きにライブやっていこうと思える機会があったというか。

 

成川:うんうん。

磯野:2017年もすぐに制作とかスタジオにこもっちゃいがちなマインドで活動していたんですけど、「fishmans night」というイベントがあった時に、オオヤユウスケさん(Polaris)と次松さん(次松大助/THE MICETEETH)という、メンバーが大好きなアーティストと共演する機会があったんです。その時に「もっとライブ沢山やっていった方が良いんじゃないかな」みたいなお言葉をいただいて。

 

成川:うん。

 

磯野:憧れのミュージシャンからかけてもらった言葉だからすげぇ嬉しいなっていうのもあって、本当に来た誘いほぼ全部出て行ったら、自然と誘いが増えて、なんか不思議だなぁって思ってて。

 

藤井:純粋に自分達のクオリティも上がったよね、やっぱりあの時期ね。

 

磯野:うん、確かに。

 

中野:評価してくれる周りの人たちの言葉を、あまり変に斜めに捉えることなく、「ありがとう」「嬉しいです」と言いながらその人達とちゃんとうまく付き合っていくみたいな事もバンドとしても出来るようになって。

やな:うんうん。

 

中野:それこそ今回いろんなゲストの人が参加してくれてるけど、そういう人たちも純粋に、誰かのコネっていうより、Emeraldの音楽を聴いて「かっこいいね」って言ってくれた人に、「じゃあこういうのやってくれませんか?」とバンドとしてちゃんとお願いできたりっていう出会いが一個一個繋がっていく、そういうバンドらしいことをやってきたのかな、という感じはしますね。

 

成川: それは前とは全然変わったなという感じですか?

 

中野:全然違うよね?

 

藤井:全然違う。音楽性でどうのこうのとかそういう観点よりも、一番大きかったのはマインドの部分だったのかもしれないなぁと思いますけどね。

 

やな:それこそ元Modeast(中野以外のメンバーがEmerald結成以前に組んでいたバンド)のメンバーというか、中野さん以外は、Modeastの時はそんなにライブはしてなかったというお話を前回してましたもんね。

 

磯野:ですね、全く。

 

藤井:どこで見る事もなく、楽曲も眠ったまま……(笑)。

 

磯野:でもそういった意味でも今作は、そのModeastの時に作ったデモから最後の方はアイディアを持ってきたりして。

 

中村龍人 ( Key. 以下、中村):最初の叩き台として使ったりしましたね。

中野:今回umber session tribeの管部隊の3人に演奏してもらってる「Holiday」は、管楽器のアレンジなんかを譜面に起こして共有とかしていたのは、このタツト・ナカムラなわけですよ。

 

中村:よく打ち込みを使ってデモを作ったりするんですけど、その時は磯野と打ち込みで全体のアレンジを考えて、それを譜面に起こして共有したりして。

 

ジンボユウキ(以下、ジンボ):ゲストに対して投げるんじゃなくて、菅アレンジまで全部やったんですか?

 

中村:はい。本当はやって欲しかったんですけど(笑)。

 

中野:結果的に「あ、こんなこともできるんだ」っていうすごい発見があったし、「タツさん(中村)スゲーな、ヤベーな」っていうのがすごいあった。

 

中村:初めて聞いたんだけど(笑)。

 

中野:いや、ちゃんとね、ここでね、言わないといけない。

やな:アルバムのお話はこの後また改めてゆっくりお伺いしたいんですけど、今ここまで喋った感じで、ますますバンドとして一体感というか良い感じになってきたんだなっていうのをすごく感じました。前回出ていただいた時もちょっと話したんですけど、こんなに続くと思ってなかったっていうところが、最初はちょっとあったと思うんですよね。

 

Emerald:(笑)。

 

やな:やっぱり中野さんというボーカリストがいて、それとは別にあったバンドとの組み合わせでできたバンド、って感じじゃ全然なくなってきたんだなということを感じました。

 

中野:Emeraldとして走りだした当初から「ナカノヨウスケが引っ張っています」みたいなバンドではなかったんですけど、「バンドを楽しくやっていくために一人にストレスがかからないように」っていうのを皆すごいちゃんと考えてて。だからオレに「全部、バンバン引っ張ってください」みたいなことは絶対言わないし、逆にオレが曲を書いたり色々やっている時も皆が引っ張ってくれてたりってふうになってきて。

 

成川:うん。

 

中野:そこを主に気を回してくれていたのが磯っち(磯野)で、ずっと皆のマインド管理というか、モチベーション管理というか、そういうのをすごいちゃんとやってくれていて。そういうのに皆何度も救われながらてやってきたなって。音楽的部分はタツさんが最初にデモを持ってきてくれたりするし、他の皆も自分に任された役割をどんどんしっかりやるようになってきて、バンドっぽくなってきたというか。

 

成川:なんか余裕で次の10年目まで突っ走れそうな。

Emerald:突っ走りたいですね。

【2曲目】Emerald / Holiday

成川:ところで、今回のアルバムで皆さんそれぞれの推し曲ってどれですか?

 

磯野:僕はギタリストなので「Border Rain」のギタープレイをぜひ聴いていただきたいです。

 

藤井:そういう観点なのね(笑)。

 

磯野:そうそう。今まででやってたプレイとまたプレイの質をちょっと変えたんで、それが一番反映されているのが「Border Rain」なので、ぜひ聴いてもらいたい。

 

高木陽 ( Dr. 以下、高木):僕は「JOY」が好きです。さっきも話したかもしれないですけど、タツさんが作っただいぶ昔のデモが元ですよね?

 

中村:7年前くらい?

 

ジンボ:そんな前なんですか?(笑)。

 

高木:それがやっとバンドサウンドで再現できたっていうのが実はすごい嬉しくて。

 

磯野:あー確かにね、なるほどね。

 

高木:なおかつ中盤に、Jazz The New Chapterみたいな感じの最近のジャズっぽいフレーズもあって、結構色々チャレンジングな楽曲になったんで……

 

成川:やりたいことが形になった?

 

高木:かなり詰まっているんじゃないかな。

 

藤井:割と胸熱感はあるよね。

 

一同:(笑)。

 

中野:めちゃくちゃ歌詞もメロディーも苦労して。

 

藤井:苦労したねあれね。マジで苦労したんですよ本当。

 

中野:曲がめっちゃキャッチーだから、ここまできたらめちゃくちゃポップな曲を作んなきゃいけないんじゃないかと気負っちゃって。そしたらめっちゃ暗い歌詞になって。

 

一同:(笑)。

 

藤井:しかも「メロディー浮かばなくなってきたー!」みたいな感じだったからね。

 

中野:大変だったけど、結果頑張ってよかったなっていう感じには仕上がったかな。

 

やな:基本的に歌メロと歌詞は中野さんが作っているんですか?

 

中野:そうですね。この曲は本当に悩みながら、真夜中にわざわざ起きて考えてみたりとか、色々試しましたね。

 

中村:僕も実は「JOY」。

 

中野:全部、高ちゃん(高木)に言われたパターン?(笑)。

中村:そうですね(笑)。とはいえ、7年前くらいに曲を作ってからEmeraldに持ってきてアレンジがさらに変わって、その変わり方は7年前から今までに僕たちが聴いてきた音楽なんかがアップデートされているので、デモを作った人間の目線としては曲が成長していったような、そういう胸熱感があるかな。

 

藤井:僕はですね、リード曲のMVにもなってる「step out」が圧倒的に一番好き。真ん中から後のCメロに入ってからリズムがガラっと変わる瞬間があるんですけど、自分のベースのリズムアプローチは初めての試みだし、ドラムやギターのリズムアプローチなんかも、明らかに今までと違うんですよ。初めてバンドとして4つ打ちの場面を入れられた曲。

 

成川:確かにライブで初めて聴いた時は、そこで「おぉ!」って思いました。

 

藤井:そう思ってもらえると嬉しいなと(笑)。多分そこが個人的には一番踊れるんじゃないかなっていう。まずはさわりの部分だけでもそういう世界に、作るところに入っていくことが出来たのが、バンドとしても自分としても大きいなあなんて。

 

中野:僕は9曲目の「after blue」という曲がすごい思い出深いです。これが出来た時に「ああ、まだEmeraldやれるわ」と思って。すごい煮詰まっていた時期なんですけど、人生的にもかなり詰んでた時期で。

 

一同:(笑)。

中野:僕が先に進もうと思う時っていい曲ができた時なんですよ。苦しい窮地から抜け出そうと思う理由もいい曲ができた時なんです。この曲ができて、その時めっちゃ苦しかったけど、「これもうちょっと頑張ろう」みたいなきっかけをくれた曲だったりもする。

 

やな:うんうん。

 

中野:これは僕がEmeraldのセッションをこっそり録音してたヤツに後から歌を入れてメンバーに提示して、「良いじゃん!」って言ってくれた曲なんですけど、それも嬉しかったし。今までやったことのない歌い方だし、自分の低い声をテンポよく歌うみたいなことを初めてやったりしたので。

 

成川:メロディーが短いというか、そういう曲って珍しかったりしますよね。

 

中野:語尾を伸ばす曲が多いなか、低い声でテンポよく歌っていくことをやれたし、自分の素の部分を曲に出せた部分もあったので、これは大きい収穫というか、僕にとってはめちゃくちゃ思い出深い曲です。ライブの時も一番テンションが上がるというか、そういう曲です。

 

やな:そういう、「中野さんが今詰んでるな」みたいなのって、周りも感じ取っていたりしたんですか(笑)?

 

磯野:別に陽介さんに限らず他のメンバーもほぼ毎週スタジオで顔を合わせているんで、「何か今大変なんだろうな」とか……。

 

藤井:誰かしらがよく詰んでるからね。

 

磯野:まぁ「詰んでるけど大丈夫?」とかいうのは特になくて(笑)。

 

一同:(笑)。

 

磯野:お互いもう大人だから(笑)、「しっかり生きてけよ」ってのが、それって多分5人バンドとして誰かが誰かに依存するんじゃなくて、それぞれが自立してる、っていうのがそのままアンサンブルに出ていると思うんですよ。

 

成川:確かに今回それが強く出ているなって思いました。

 

磯野:「ただ本当に困った時は言えよ」ってスタンスでやってるっていうのは、音楽を構成する意味では結構重要なメンバーの考え方というか。

 

中野:逆にいつも通りの空気の中で演奏することで正気を取り戻すみたいな(笑)、どんなに浮世離れした状況で苦労してても、いつも通りスタジオに来て、「あ、がんばろ」みたいな、そういうのがありますね。

 

磯野:なんかやべぇバンドみたいになってきたけど、大丈夫かな?(笑)。

 

一同:(笑)。

 

磯野:全然そんなことないんだけどね(笑)。

 

ジンボ:個人的に思ったのが、Emeraldと、中野さんが前にやっていたPaperBagLunchbox(以下:PBL)は直接的に関連性がそこまであるものではないですけど、PBLが出てきた頃ってちょうどオルタナとかエレクトロニカ、ポストロックみたいな、「ロックバンドが無限にいろんな音楽要素を吸収して進化していける」みたいなことを、割と無邪気に信じられたというか。

 

中野:そうですね。

 

ジンボ:で、その先なんだっけ?みたいなのがよくわからないまま2010年代に来ちゃったかなって。

 

中野:で、シティポップ!みたいになってって、みたいなね。

 

ジンボ:はい。っていうのがあったんですけど、その一つの回答が割とコレなんじゃないかな、と。

 

Emerald:おおー。

 

ジンボ:ロックバンドが、新しいジャズとかネオソウルとかみたいなものを吸収して、歌物=ポップスをやってるんだっていう進化の仕方を「あ!こういうことか!!」みたいなのがありました。

 

藤井:めちゃくちゃ嬉しいよね。

 

中野:嬉しい、一番嬉しいやつや、これ。

 

磯野:すげぇ持ち帰って考える言葉だよね(笑)

 

藤井:持ち帰って考える、かつ、反芻して…

 

磯野:反芻して、今後の活動で…

 

高木:どっかで使わせてもらう…

 

中野:どっかでインタビューしようぜ、もう。

 

Emerald:(笑)

 

中野:もともとロックをやった理由とか最近考えてるんですけど、単純にロックだったら新しいものが作れるっていうことを当時のオレは本当に思ってたし、一番ヒップなものだと思ってた。だから「自分の内面を表現するためにはロックじゃなきゃダメだった」とは、絶対思ってなかったなって。バンドであることはやりたかったんだけど、一番ロックが格好良かったんですよね、結成した当時。

 

成川:うんうん。

 

中野:でもバンド解散した後に、また新しくバンド始まった時に、ロックをやってたら居心地が悪くなってきちゃって。あんまり「ヒップなことをやってる」っていう感じになれないって思って。もともとヒップなものに憧れてロックを始めた人間だから、やってくうちにエモくなってきて、そういう風になっていくんですけど。

 

成川:はい。

 

中野:Emerald始まった時は、PBLを初めて組んだ時に感じていたような「ヒップなものを手がけている興奮」みたいなものがめっちゃあったんですよ。今のメンバーとこうしていることが「格好良いっしょ!」て言えるって思って、そういうのが今伝わったのが嬉しくって。そういう想いが、ある種通じた部分があったのかなみたいな。

 

ジンボ:ありがとうございます(笑)。

Emerald:(笑)。

自分の楽器を自分だけの意見で詰めずに、他人からの目線をかなり吸収してやったていうのが全然今までと違うところ。(磯野)

成川:あとは、このアルバムの各曲を煮詰めていく作業が、すごい苦労したんじゃないかなって思ったんですけど。

 

磯野:今作のそういう「煮詰めた感」「色々考えられてる感」って、各人の演奏を自分だけの意見で詰めずに、他人からの目線をかなり吸収してやったっていうのが全然今までと違うところなんです。

 

成川:うんうん。

 

磯野:例えば陽介さんが「このメロディを作ってきたんだけどイマイチなんだよね」って言ってるところを、逆に藤井とかオレが「いや、このメロディめっちゃ良いけど!」とか。今作はメンバーの意見を信用できるというか、「お前がそう言ってるなら良いのかも」って信じてそのまま進めるっていうのが結構いろんな場面であって。だから今まで弾いてなかったフレーズとかが出せた。そして結果的に楽曲全体のクオリティが上がったっていうのがあったと思うんですよね。

 

成川:うんうん。

 

磯野:例えば「単音で16分で刻む」みたいなギターのアプローチって、「ハイハットが16分で刻んでるからギター的にはちょっとコレ合わせづらいよな」とか、「このフレーズ生きてる?成立してる?」みたいなのがあったんですけど、藤井が「絶対良い」って言うんで、じゃあ絶対良いんだろうな、とか。

 

藤井:「そこはシビアだけど点で合わせてくれ」ってね(笑)。

 

磯野:そうそう(笑)。「じゃあわかった、やってみる」って言って。でもそれが最終的に分かるのって、ぶっちゃけレコーディング、ミックス、マスタリングまで終わってから、最終的に「良かったね」になるんですよ。

 

ジンボ:やってる途中には全く分からない?

 

磯野:分からない。

 

藤井:盲目的に信じていかなきゃならないんだよね。

 

磯野:でも作品として仕上がった時に「あ、こういう目線で映ってたんだなオレのプレイ」っていうのをたくさん信じて、普段やらないフレーズをたくさん弾いたっすね。

 

中村:「step out」「JOY」ですごい苦労したのが、最初にベーシックでレコーディングをしたんですけど、その後に追加で上乗せするアレンジをどんどんやったんですね。それに対するディレクションを藤井がやっていくんですけど、「なんかちょっと違うんだよなー」って(笑)。

 

藤井:「足りてないなー」ってね(笑)。

 

中村:「全然キテないなー」って。

 

藤井:「タツさん、居残りで合宿して、残りのアレンジ作業をやってきてもらっていいかな」って言って(笑)。

 

磯野:この「足し算」っていうのは結構苦手なメンバーが多いんですよ。楽曲のキーボートアレンジとかギターアレンジって足し算の世界なんです。逆に藤井とか陽介さんはすごい得意なんですよね、その考え方。僕とか中村とか高木はどちらかというとベーシックを考える方が得意で。

 

成川:うんうん。

 

磯野:ベーシックのアレンジが決まると僕らは結構油断しちゃうんですけど、今回は足し算までこだわろうぜってなって。で、足し算が得意な人と得意じゃない人の人間性ってあるよねって話になって。それを「牛丼」で各々の考え方を例えてたんですけど(笑)。

 

やな:牛丼?

 

磯野:その時にオレは「一番良い牛丼は吉野家だ。余計なものは載せなくて一番美味いものを目指してる」みたいなことを言ったんです。で、藤井とかは上に載っけるものを色々考えたいって。

 

やな:すき家だ!(笑)。

 

磯野:で、陽介さんにその質問したら、「オレは吉野家で牛鮭定食頼んで、鮭をほぐしてフレーク化してかけて食べる」

 

藤井:天才か!こいつ天才だな。

 

磯野:マジ天才なんだな。こういう人が良いキーボードフレーズ考えるんだなって。そこで結構「才能の差」を感じたよね(笑)。

 

一同:(笑)。

 

磯野:でも本当に「ちょい足し」を考えるって、そういう遊び心だねっていう。

 

中村:今回も陽ちゃんと二人で、オレん家で夜中に「step out」の追加アレンジをやったときもさ。

 

中野:そうだね、やったね。「ドゥウウィーンなんだよ」とか言ってね。

 

一同:(笑)

 

中野:「ドゥウウィーン、ていうのをずっと入れたいんだよ」って言ってて。

 

一同:(笑)。

 

中野:「ドゥウウィーン、ていうのをずっと入れたいんだよ」って言ってて。

 

中村:「あ、あぁ……」みたいな。

 

藤井:それで追加アレンジした音源を「これサトシ(藤井)に聴かせてみよう!」ってなって。

 

中野:「シュシュシュッシュシュシュシュ、なんだよ」とか言いつつね。

 

中村:で、藤井が「それそれ!!」って。

 

磯野:「やっぱ合ってるよな!」っていう。

 

一同:(笑)。

 

成川:でも、曲ができるまでどのタイミングの作業でもメンバーみんなの意見というか、全員でちゃんと作業してるんですね。

 

中野:そうですね。それは良い意味でも悪い意味でも大変なんですよね。

 

藤井:担当分けはされてるけどね。

 

中野:そうそう、時間かかるなっていう。

 

ジンボ:確かに(笑)。

 

成川:バンドでやってる理由でもあるんでしょうけどね。

 

中野:元々誰かひとり引っ張って「何とかやってやろう」っていうバンドではないので、そこがまぁ良いところですね。

 

成川:ここらで選曲タイムを挟みたいと思います。今回は皆さんに3曲、このアルバムに関連したものということで選んできてもらいました。

【3曲目】Sam Smith / Restart『In the Lonely Hour』収録

中村:これはですね、アルバムに入っている「step out」とか「JOY」を作曲している時に「参考曲として何か面白そうな曲はないかな?」と皆で調べていた時に自分が見つけて、共有しました。

 

成川:この曲からどういうヒントを?

 

中村:まず一つあったのはウワモノのアプローチですね。この曲はピアノをそのままピアノだけで鳴らすのではなくて、ストリングスのような音を同時に鳴らして厚みをつけるアプローチをしていて、そこをアレンジの参考にしました。あと、Sam Smithの声のふくよかな感じは、中野陽介のボーカルに通じる所が少しあるかもなって思って。

 

藤井:ハイトーンなんだけど嫌味がない感じとかってのは、確かに目指すべきところとしてはあるよね。

 

成川:いま「厚み」って言ってくれましたけど、Emeraldの作品って夜のイメージが強いんです。でも冷たい感じではなくて、その「音の感触」とかが多分デカイなぁって思うんですよね。

 

ジンボ:あとEmeraldってピアノの鳴り方で曲の印象が決まるところがあるのかなって思ってました。ピアノがコード弾きとウワモノだとHIP HOP、R&B系になっていって、シンセ的に使うとロックっぽくなっていく。結構そこで決まってるのかなって。

 

中野:音色は、毎度ホントに大変ですよ。徹底的にやろうとしたらキーボード何台要るんだってぐらいの量の注文がね。

 

中村:「オマエ、手2つしかないのか?」って。

 

一同:(笑)。

 

ジンボ:小室哲也ばりに?

 

中村:「手2つしかなくてスミマセン」みたいな話をよくするんです(笑)。

 

中野:「ナカムラ手2本しかねぇからな。指も10本しかないからな」とか言ってね。

 

藤井:「腕の本数が、どう考えても少ないな」とか(笑)。

 

中村:ほんとスミマセン…(笑)。

 

磯野:たぶんリードプレイよりも伴奏プレイのほうがタツさんは得意なんで、そうするとギターはそれに合わせて避けてくみたいな。多分ピアノの伴奏プレイって結構埋まりすぎちゃうから、そこでギターはボリュームとか音色とかでアンサンブルする、みたいな調整するのは一番最初にあるよね?ベーシックなところでね。ちゃんと伝わってた?(笑)。

 

一同:(笑)。

 

成川:じゃあ次の選曲いきましょうか。

【4曲目】宇多田ヒカル / 道『Fantôme』収録

成川:これは中野さんが選んだということで。

 

中野:ちょうど曲を作っている時に一番胸熱で。8年ぶりのアルバムだったじゃないですか、これ。で、「何歌うのかな?」「どんな音で来るのか?」とかホントに心待ちにしてて。聴いて案の定、超ぶっ飛ばされて。だからその当時なにか影響受けてとか曲の参考にしたとかじゃなくって、一番のホットトピックだったんですよね。歌っていることもそうなんですけど、今の時代が求めているものとか、時代が「これ次来るだろう」みたいものを宇多田さんは毎回最初にやってくる人だから……

 

成川:刺激になった?

 

中野:すげぇ刺激になったし、「あ、こういうことまだ歌ってもいいんだな」とか「こういうことやってくれる人がいるんだな」みたいな、勇気付けられましたね。

 

やな:ちなみに中野さんが歌詞を書く時って、今作に関しては基本的に全部後から歌メロ乗っけてるような感じですか?

 

中野:「ナイトダイバー」「黎明」以外は全部後からかな。

 

やな:そういう時の歌詞の内容って、音から受けたイメージに合わせて書いてくんですか?

 

中野:それもあります。

 

やな:そうじゃないのもある?

 

中野:歌詞から最初にぶわーって書いて、その歌詞の中で良いのを使いたいなみたいな感覚でその曲を聴いて、ハマるところを抜き出していって、テーマを決める。みたいなものもあるし、聞きながらなんとなく歌ってみて、日本語でも英語でもないような歌詞でずっと歌って、「空耳アワー」じゃないですけど、そこに言葉っぽいのをみつけて、それから作っていくってのが多いかもしれない。ただ、どうやってできたのか後から振り返ったら全然わかんなかったりするんです。結構ベロンベロンに酔っ払って作っていることも……。

 

一同:(笑)。

 

やな:逆に他のメンバーは、「この曲にこんな歌詞を書いてくるんだ!」みたいなことはあります?

 

中野:基本的に歌詞あんま聴いてないもんね?

 

磯野:そーね。


Emerald:そーね。


一同:(笑)

磯野:いやいやそんなことないよ、自分だけです(笑)。藤井とかタツさんとかは結構歌詞とかしっかり聴いてるんで。

 

中村:正直、自分は歌詞について何かを気付くタイミングはすごい遅いですけど(笑)。「こういう曲をこんな風に解釈したんだ」みたいな発見はあったりはするよね。

 

磯野:歌詞の捉え方は藤井が一番気にしてるかなってオレは思うんだけど?

 

藤井:作曲時に歌詞を一回持ってくるじゃないですか。その時に「この曲どういうイメージで、どういうテーマで持ってきてんの?」とか、「そのテーマってなんなの?」とか、「その歌詞の世界観を聞かせてくれ」とか、最初に確認します。

 

やな:へー!

 

成川:それ最初に聞く?

 

藤井:聞きます聞きます。コーラスもするんで。で、そこに対して、じゃあベースをどういう風につけようかなって自分の材料にするってのもありますし。そこでもちろん「でもその印象ってちょっと違くない?」みたいのがあるから逆に歌詞を補正してもらう役に入ったりとか。特にここ(藤井&中野)のやり取りは多かったりして。

 

やな:そうなんですね。

 

藤井:後は、なんとなくの感覚でいいんですけど、歌詞づくりに関してなるべく客観的に物事を見れるような内容にしていって欲しいなってのがあって、「これだとちょっと直接的過ぎない?」とかは結構話し合ったりしますね。

 

やな:昔から中野さんの音楽を知っていると、やっぱりすごく詩人のイメージ強いですし、こう…エモいイメージが強い人なんですけど、今作聴いた時もソコがほとんど気にならなくなってくるっていうか、中野さんのボーカルをよくここまで「一部分」にできるよなって。

 

成川:うん、音としてね。

 

やな:驚きもあったし。そのバランスの良さっていうか、馴染み方は凄いなぁって思いましたね。

 

磯野:もしかしたら「歌い方」ってところで陽介さんが工夫しているところが…。

 

成川:それはすごい感じます。

 

中野:要は、言葉で、それこそBUMP OF CHICKENみたいに頭からケツまでストーリー全部作ってバーッと歌わせてもらえないんですよ。

 

一同:(笑)。

 

中野:歌詞の一部を切られちゃうから。「ココ要らない」みたいな。

 

藤井:根に持ってんだね、結構ね(笑)。

 

磯野:どんなインタビューでも絶対言ってるよね、毎回バサッと切られるみたいな(笑)。

 

中野:切られて、そこの空白になったストーリーをジャンプアップして次の歌詞に伝えるために、歌い方とかで表現しないといけないんですよ。だから自分のスタイルもだんだん変わっていくっていう。

 

やな:ああーなるほど!

 

中野:そこをどう乗り越えてモノにするか、みたいな。まぁ常に課題を頂いたなかでやれてるんで……

 

一同:(笑)。

 

中野:本当に有意義ですよ、僕としては。楽しいですよ、苦しいですけどね。飲んじゃいますけどね、お酒。

 

一同:(笑)。

 

成川:結局飲んじゃうんですね(笑)。

 

中野:飲んじゃう時もあります。

 

成川:じゃあ最後のEmerald選曲にいきたいと思います。

【5曲目】Sade / Cherish the Day『The Best of Sade』収録
あと口開くたびに言ってるんですけど、もう次の作品は、早めに出したい。(藤井)

磯野:「sadeを今聴いてて、めっちゃ良いんだよね」っていうので持ってきたのかも。

 

中野:うん、そうだった気がする。

 

磯野:曲作りで自分のギターが煮詰まったんだんですよ。で、sadeのバックの人たちはバンドなんですけど、ひたすら同じフレーズを弾き続ける。ただそのセンスが凄く研ぎ澄まされていて、フレージングを考える時に参考になるなって思って。

 

成川:今日選んでもらった3曲とも、ヒットチャートも上位の上位、スターのポップス達で、やっぱりEmeraldとしてはポップスをやりたいということですか?

 

磯野:そうですね、ポップス好きなんで。自分達がやるのもポップス。

 

中野:オレみたいのが歌う以上、そうしないといけないってのもあるんだろうな。

 

藤井:あれ?そんなにポップス寄りですか?

 

成川:はい……(笑)。

 

一同:(笑)。

 

藤井:そんなことなくない?

 

中野:いやぁ日本語で歌ってますからね。

 

藤井:でも「J-POP」がやりたいってのはあるからね。

 

磯野:そうね。

 

中野:世代ですもの。

 

一同:(笑)。

 

成川:たぶん「Emeraldってどういうバンド?」とか聞かれると困ると思うんですよ。

 

藤井:そういえばこないだ別のインタビューで書いてくれた方は、うちのバンドを表した時に「ポストJ-POP」って書いてて。

 

磯野:あぁー。

 

中野:確かにそうだった。

 

藤井:「ポストJ-POP」ってワード、これ結構ぴったしかもしれないと思って。EmeraldはJ-POPをやりたいんだけどJ-POPになりきれてないみたいな所が多分あって、「じゃあそれは何なんだ?」ってなった時に、「ポスト」って言葉は一番簡単で便利。

 

一同:あぁ(笑)。

 

藤井:「ロックに対する何かだからポストロックだろ」みたいな感じだと思うんですよ。でも「ポストロック」でもなくなってきてるなら今何だっていったら、「ポストJ-POP」。確かにな、みたいな。

 

磯野:確かにあれはめっちゃ良い言葉教えてもらったっていうか、これから使っていこうって思った。

 

藤井:これから使っていこうって思ってて…、今の今までちょっと忘れてた(笑)。

 

一同:(笑)。

 

成川:一、二年前の「シティポップ」みたいに、Emeraldの音楽に何かジャンル名をつけたいとしたらぴったしくると思うんですよね。例えば入江陽さんとかbutajiさんとか、すごいJ-POP感のある人たちがいっぱい出てきてるんで、結構Emeraldのこのアルバムは、その先頭をドーンといきそうな……。

 

Emerald:おぉ。

 

磯野:いやいきたいけどね、前作のアルバムも「先頭切ったー」ってつもりだったけど……。

 

藤井:その後からceroが「バァーン」ってなって「うわぁーー」ってなって(笑)。

 

一同:(笑)。

 

中野:あったね。

 

藤井:「でもオレらもcero好きです!」みたいなね。

 

磯野:先頭かどうかというか、誰が有名になったかになるよね。

 

藤井:最初の一歩は出るんだけど、そこからのスローペースっぷり(笑)。

 

高木:スピードが遅いんだよね。

 

藤井:そう、スピードが遅い(笑)。

 

成川:(笑)じゃあここでもう一曲、Emeraldの新作から「step out」。

成川:今日何度も名前が上がってたトラックですけど、3曲選曲聴いた後だとまたちょっと違って聞こえますね。

 

中野:そうですね。

 

成川:はい、じゃあ最後に、これからのEmeraldについてなんですけども、これから3年後、10周年になるわけですども、その時までに達成したい「野望」などあれば。

 

磯野:野望というか、希望……?

 

一同:(笑)。

 

藤井:大型フェスだよね。

 

磯野:大型フェスに出たいってのはありますね。

 

やな:野外ですか?

 

藤井:野外ですね。今回のCDでまた一つ話題作って、イベントとかにしっかり出れるよう

になったりとかして、大型フェスにはやっぱり出たいなってのはありますね。

 

磯野:あとは、ふわっとした部分でもあるんですけど、目標というか。今作色んな人と関わる機会があって、それはミュージシャンであったり、例えばメディアの人、裏方の方や流通とか、色んな人との関わり方で作品の広がり方が全然違った形になってきているんですね。

 

やな:はい。

 

磯野:「目標」ってものを決めて動いているバンドではなく、その都度見えてくるものに対して一生懸命やるっていうスタンスなので、だから色んな人との関わりを広めていきたいなっていうのが、この3年でもっとやっていきたいなって……

 

中野:そうですね。それが結果的にきっと大型フェス出演につながるし、その根っこにあるのは、毎回ちゃんと「良い曲」を作るのが根っこ。で、それが一番の目標で良いと思うんですよ。それを広めるために色んな人と関わっていって、広めていった結果、大きいフェスに出れたりとか、自分たちのワンマンでちゃんとお客さん集められたりとか、そういう正しい道を進んでいこうという、バンドです(笑)。

 

藤井:あと口開くたびに言ってるんですけど、もう次の作品は、早めに出したい。

 

やな:(笑)。

 

藤井:もうepでもシングルでもなんでも良いから音源が、出したい。

 

成川:そうですね。年イチくらいでなんかしらの音源が届いたら良いなって思っていますので。

【ライブ情報】

『Pavlov City』リリースパーティーをbonobosとの2マンで1/18渋谷WWWにて開催!

 

2018/1/18(木) 渋谷WWW

Emerald 2nd Album "Pavlov City" Release Party 『Neo Oriented』

[LIVE] Emerald / bonobos / ecke(O.A.)

 

open 18:00 / start 18:30

adv ¥2,800 / door ¥3,300 (+1drink)

 

ticket:①ライブ会場販売 / ②各種プレイガイド

チケット一般発売:2017年11月26日(日) 18:00より発売中。

プレイガイド(11月26日より発売中)

e+

Lawson(Lコード:75123)

チケットぴあ(Pコード:101-176)

info:渋谷WWW 03-5458-7685

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